読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

看護師転職ごっこ

転職を繰り返した看護師の私が毎日元気になれるよう、仕事、人生にふらふらしたときに気ままに書いています。

医師の過労死ラインを超える協定書が存在してる

f:id:una-kowa:20161220191604j:plain

いつのころからか、医師たちの間でこんな言い回しが使われるようになった「逃散」。

 この言葉は、本来中世から江戸時代にかけ、年貢や圧制に苦しんだ農民が集団で土地を放棄、逃げ出したことを指す。

 農民にとっては抵抗、闘いの手段でもあった。それを、現代の医師たちは過重労働に耐えかね、職場を去っていく自らの姿になぞらえた。相次ぐ勤務医の退職は医師による抗議の意思表示だというわけだ。

 医師の労働実態は長年、明らかにされてこなかった。手に職を持ち、組織に縛られることなく技術を磨きたいとの思いが強いためか、看護師のような労働組合組織が発展することもなかった。医師の多くは、自らが「労働者」との意識は希薄だ。

 そのブラックボックスのふたを開けようと試みたのが、勤務医らを中心とした全国医師連盟と医師による労働組合。全国医師ユニオンだ。2009年、地域の拠点病院を対象に勤務医の残業や休日労働に関する「36協定」の締結状況について調査に乗り出した。

 調査対象は大学付属病院や国公立病院など全国の拠点病院1549病院。労働基準監督署に情報開示請求して協定書を入手、集計・分析した。この結果、労使間で三六協定を結んでいたのは、全体の7割(1091病院)にとどまることがわかった。このうち、一ヵ月あたりの残業が過労死ラインと言われる80時間以上だったのは15% (168病院)、一ヵ月の法定上限である45時間以内に収まっていたのは54% (594病院)だった。

このデータの意味は?

そもそも過労死ラインを超える協定書が存在していいはずがない。一方で、全国医師ユニオンによると、むしろ問題なのは、協定書を結んでいないとした残りの三割(458病院)や、毎月の残業が45時間に収まっているとした協定書を開示した病院だという。

 協定書が必要ないのは、労働時間が法定時間内(一日8時間、一週40時間)に収まっている場合だが、地域の救急医療や休日診療を担う基幹病院に勤める医師の残業がゼロ時間など、まず、ありえない。また、毎月の残業が45時間以内に収まることも考えづらい。

 さらに、ほとんどの協定書には特別条項が付記されていたが、病院では季節によって業務量が変動することはなく、特別条項は協定書を合法化するために濫用されているにすぎないという。

 全国医師ユニオン代表の植山直人さんは「いずれにしても、多くの勤務医が法律無視の無法地帯で過重労働を強いられている実態が明らかになった」と指摘する。協定書に残業時間が正確に反映されていないとすれば、残業代の未払いも常態化している可能性が高い。

 医師連盟や医師ユニオンが強く求めていることの一つは、この残業代の未払いをなくすことだ。とくに、多忙な当直が労働密度の低い「宿日直」とみなされ、わずかな手当てしか支払われていない現状は早急に改めるべきだという。

 全国医師ユニオンなどは、こうした未払い賃金の総額は年間で2100億円に上ると試算する。その根拠はこうだ。医師の時給を5000円とした場合、当直業務に時間外手当や深夜手当てを計上すると、本来、当直1回につき約10万円が支払われなくてはならない。実際に支払われている当直手当の平均を3万円とすると、未払い賃金は差し引きして7万円。

 当直が年間50回とすると、医師一人当たりの年間未払い額は250万円となる。勤務医の三分の一に当たる6万人がこうした環境にあるとして、年間の未払い総額は2100億円とはじき出したわけだ。

 植山さんは「2100億円は医療費の総額からみれば、決して補填できない規模ではないはずです」と指摘。そのうえで、医師不足を解消するためのこんな「処方箋」を提案する。

 「まずは、ただ働きをなくすこと。実態に見合った賃金を払うとなれば、まず、病院が財政的な観点から現在のような異常な長時間労働を改めざるをえなくなります。さらに、ただ働きがなくなり、長時間労働が解消されれば、これまで割に合わない、身体がもたないと逃げ出してしまった医師たちが、必ず戻ってきます。

法律を遵守

法律を遵守した働き方を徹底させることが、「逃散』した医師を呼び戻す最も有効な手立てなんです」

36協定に関する調査結果を受け、全国医師連盟と全国医師ユニオンは2010年5月、厚生労働省に勤務医の労働環境の改善を求める要望書を提出。全国の公的病院における36協定の公表や、労働基準法に違反している医療機関への是正指導などを求めた。