看護師転職ごっこ

転職を繰り返した看護師の私が毎日元気になれるよう、仕事、人生にふらふらしたときに気ままに書いています。

最後のお世話"エンゼルケア"

心臓停止・呼吸停止・瞳孔拡大。医師が静かに時間を告げます。
「6時30分」
死亡宣告。この瞬間だけは、どれだけナースという仕事をしてきても、何ともいえない気分になってしまいます。きっと、この先もかわらないのでしょう。
長く入院していた患者さんだと、思わず涙ぐむナースも。

一方ご家族の方は、悲しさの反面、長く苦しい看護生活から解放されたという思いでどこかホッとした表情を浮かべている方も多いようです。誤解しないでくださいね。決して冷たいわけではありません。それだけ病気と闘うという"現実"は重く、辛いものだということなんです。

さて、私たちナースは泣いている暇はありません。そこから、最後のお世話"エンゼルケア"に取りかからなくてはいけないからです。
エンゼルケアというのは、亡くなった方に施す最後の処置のこと。死後硬直は、志望の約2時間後から徐々に始まります。その前に処置をしておかないといけないので、ここは大急ぎ。
まず、身体をきれいに拭きます。そして次に使うのは、割り箸と脱脂綿。「?」とお思いの方もいらっしゃるでしょうね。
人間の身体には、様々な穴が開いています。口、鼻、耳、肛門、これらは生きている間は自分の意志で閉じることができますが、死んでしまうとできませんよね。そうすると、そのままにしておくと様々な分泌物や内容物が遺体から出てきてしまうことになります。臭いが漏れてしまうだけでなく、様々な病原菌が飛散してしまう可能性も。これを防ぐために、ひたすら穴に脱脂綿を詰めていく。エンゼルケアの重要な作業です。
体内にチューブを通していたりして傷口が閉じていない場合は、同じ理由で、キレイに縫い合わせます。最近は手術後を糸ではなく針(ホチキス針を想像してください。あれの針が太いものです)で止めていることも多いので、遺体を焼いた後に残ったりしないよう、そこも外して糸に替えます。
それから、まぶたが確実に閉じるよう"閉眼紙"という紙を水で濡らして眼にいれます。コンタクトレンズを入れるのと同じ要領ですね。
最後に新しい寝間着を着せてあげて、身体の形を整えて完了。終わったら、遺体を霊安室に運びます。一応私がいる病院では、昼間に亡くなった場合は他の患者さんの目に触れないよう、全て病室のドアを閉めてから運ぶことになっています。でも、人が亡くなる前はバタバタとしているので大体患者さんたちもその辺は察してくれるんですね。皆さんおとなしくドアを閉めるのに協力してくれます。それはもう"暗黙の了解"。

エレベーターを専用に切り替えたら、霊安室の階へ直行するまで、他の人はそのエレベーターを使用することができません。そうやって、なるべく闘病中の方がご遺体を目にしないよう、気を遣うんですね。

患者さんが亡くなるのは、なぜか明け方が多い。

先日、看護師長や先輩ナースも言ってたんですけど、どうやらそういう傾向は本当にあるみたいなんです。夜明けと共に人間の魂が召されていく。何だか意味ありげに感じてしまいます。

ライティング&投稿 小西 仁瑞