看護師転職ごっこ

転職を繰り返した看護師の私が毎日元気になれるよう、仕事、人生にふらふらしたときに気ままに書いています。

目の前で飛び降り・・・、難しい心のケア

ある冬のことでした。その版の夜勤はナースがふたり。と、ナースコールが鳴りました。見るとYさんの同室Kさんから。夜勤ナースのひとりは、私同期のAでした。

Kさんは身の回りのことは全部自分でできるレベルの症状の患者さん。たぶん尿瓶の交換だろうな、と思ったA、普段だったら定時の見回りのときでもいいか・・・・・と思うことが多いんですが、そのときは忙しくなかったこともあり病室へ向かいました。

 Kさんのベットのカーテンを開けると、あわてた様子のKさんが口をパクパクさせながら「あっち、あっち!」というジェスチャーで窓の方を指しています。

何だろう、と思って窓の方を見たA。そしてAの目に飛び込んで来たのは、ゴミ箱を踏み台にして窓から飛び降りようとするYさんの姿でした。

後日、Aがそのときのことを言ってました。

「あのね、ああいうときって、本当に体が動かないもんなんだね」

我に返った彼女、必死の思いで「Yさん!」と叫びました。その声に我に返ったYさん、飛び降りるのは踏みとどまりました。

しかし、その数日後。今度はYさん、自殺するためになんと硬貨を飲み込みました。レントゲンを撮ると100円玉と5円玉が写っています。ナースたちは思わず、

「消費税込みだよ」

と笑っていいものか、何とも言えない気分になったものですが。

さて、さすがに二度も事件があっては、病棟では緊急会議。とりあえずYさんには空いている個室に移動してもらい(体を出せないように少ししか窓が開かない作りになっている部屋です)、部屋の中からはハサミや紐類、硬貨など、自殺に使えそうなものを徹底排除。そして監視カメラで24時間様子を確認、という状態にしていました。

ところが、その年の大晦日の晩。症状も軽かったので介護ができる方がいれば一時退院できる状態だったのですが、ご家族の仕事の都合でYさんは退院ができなくなってしまいました。さらにふさぎ込んでしまったYさんを私たちも気にしていました。

実は大晦日って、家族と一緒にいられない寂しさからさらに辛い思いをしてしまう患者さんが多いんです。別の患者さんで、大晦日に自殺を考えて、ナースステーションの光を見て踏みとどまった・・・・・という人もいましたから。

案の定。夜中に監視カメラを見ていたナースが、またもや自殺を試みるYさんを発見。パジャマのズボンの紐を抜いて、ベッドサイドにくくりつけて首を吊ろうとしたらしいのです。

さすがに短期間で三度の自殺未遂を起こされては、病院としても家族の方に頼るしかありません。Yさんの様子を説明した同僚ナース。

「でも仕事が・・・・・」と答えたYさんの娘さんに、

「お父さんが死にかけたんですよ!」

と怒鳴ってしまったそうです。

ナースを続けていれば、こういう経験って必ずみんな一度や二度はしているはずですが、自分の無力さにうちひしがれてしまいます。

でも、心を尽くせばそういったことを踏みとどまってくれる人もいる。そう思うと、頑張らなくちゃな、と思うんです。

ライティング&投稿 小西 仁瑞