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看護師転職ごっこ

転職を繰り返した看護師の私が毎日元気になれるよう、仕事、人生にふらふらしたときに気ままに書いています。

実習での出会い【成人急性期実習】

experience

私が外科病棟の実習で初めて知ったこと。それは、抵抗力の落ちている患者さんが病院内で常在菌に感染してしまうことがあるということです。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)など、病気で苦しむ患者さんに、さらなる苦しみを与えることになる感染症。私の受け持ちの患者さんが手術後の抵抗力が落ちたときに感染していたのです。患者さんは肝臓がんに蝕まれており、手術は成功したものの完治は難しいという状況の中でのできごとでした。

 この患者さんは私のことを娘のようにも、友人のようにも、後輩のようにも対応してくれ、実習中は、突然「食事を食べたくないからお菓子を買いにいきたい」と一緒に売店に行ったり、入院前によく行ってたというレストランの話を聞かせてくれました。あまりにも仲良くなったので、実習が終わってからもしょっちゅう会いに行き、話をしたり、実習中のように一緒に売店に行ったり、散歩に行ったり「退院したら食事に行こうね!」と約束をしました。

年の暮れに病棟を訪ねると、いつもの部屋に患者さんがいません。病室を移ったのかな?と思って病棟内を探してみると、ハイケアの部屋に彼女の名前がありました。酸素テントのついているベッドの中に眠っている姿を発見し、一瞬何がなんだかわからなくなりましたが、通りかかっが看護師さんに「○○さんの所に行きたいのですが入ってもいいですか?」と尋ねると「意識があまりハッキリしないから話はできないよ」と言われました。

それでも一目会いたいと思い、ガウンを着て、マスクをして部屋に入りました。酸素テントの中で眠る彼女は、ほんの少し前まで私と食事の話をしていたときの楽しそうな笑顔も、時おり冗談言って赤くなる血色の良さも消えていました。

呆然として、眠っている彼女を酸素テントの外から見ていましたが、知っていた姿とあまりにも違い悲しくなってしまったので、そのまま帰ろうとしたとき、部屋に看護師さんが入ってきて、患者さんに声をかけてくれました。「○○さん分かる?」すると患者さんは目を開け、私に気づきこちらを向いてくれました。私は驚いて酸素テントの中に入って、手を握ったのですが、彼女は私の目をうつろながら見て、

「ごめんね、ご飯一緒に行けなくなっちゃった」

と言ったのです。気づいてくれただけでなく、話せないと言われていたのに、一生懸命言葉をかけてくれた彼女。私はとても悲しくて泣きそうになりましたが、何とかこらえ、

「そんなことないです。行きましょう。年が明けたらまた来ますね」

と伝えました。こう答えるのが精一杯でしたが、彼女は少し寂しそうに優しくこちらをみて軽くうなずき、また目を閉じてしまいました。

心がどうにもざわついて、落ち着かないままハイケア室を後にし、看護師さんにありがとうございいますと伝えました。帰りながら、何とか頑張って行き続けてほしいと願いましたが、年が明けたときには彼女はハイケア室からもいなくなっていました。私が初めて深くかかわり、患者さんと学生でも、患者さんと看護師の卵でもなく、人として長くかかわりたいと思った方との、永遠の別れでした。

実習は、学習の場でもあるけれど、看護師がその後に向き合わなければならない現実を受け入れるための心の訓練の場でもあります。高校を卒業して安隠と過ごしてきた自分には、このできごとを容易に受け入れることはできませんが、現実を受け止めることの厳しさを、看護師という仕事の尊さを知る場をなりました。

ライティング&投稿 小西 仁瑞