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看護師転職ごっこ

転職を繰り返した看護師の私が毎日元気になれるよう、仕事、人生にふらふらしたときに気ままに書いています。

病院の「怪」

私が最初に勤務していた病院の副師長が凄い人だったんです。彼女は霊感が強く、亡くなった患者さんに関してよく「○○さんが遊びに来てたよ!」と平然と話しては私たちナースを怖がらせていましたが、彼女はそれだけじゃなく、死相が見えるらしいです。

 どうやら、死ぬ数時間前になると顔が変わるらしく、それが分かると言うんです。でも、いつ死んでもおかしくない患者さんなら分かりますが、例えば心電図にまったく異常が無く、もう数日は安泰かも、という患者さんでも、「あの人、多分2時間後くらいに急変するから準備しといて」と彼女が言うと、なんと本当にそうなるのです。

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まさに怪奇現象、恐怖のオバマ七変化 - DNA

最初に体験したときには驚愕したものでした。霊感がなせるわざなのか、もしくは経験なのか。コレに関しては、両方なのかもしれません。ちなみに、同じ個室やべッドから亡くなる人が続いてしまう、という現象は時々起こります。

よく「ひきずる」という言葉を使ったりしますが、2人や3人などあまりにも続いてしまった場合は、次に「この人なら大丈夫!」という元気な患者さんをそのべッドに配置したりと、ナースたちは気を遣います。

一応、病院ではそういう、迷信やジンクスーは公に言うわけにはいきませんが、そういうところに気を回すのもナースの仕事のひとつです。また、べッドや個室だけじやなく、ナースでもひきずる人っているんです。

やたらと自分の勤務時間帯や、担当している患者さんの死に当たることが多くなるという。人によって、患者さんの死にどれだけ出会うかはかなり個人差があるんです。私の場合、以前担当患者さんの死亡が3人続いたときは、さすがに個人的に「おはらい」に行きました。

医師にも霊感が強い人はいます。ちなみにこの間体験した怪ですが、日勤中にナースステーションで作業していたときのこと。普段から霊感が強いという医師がやってきて、とある個室を指して何気なく、「あの部屋、なんか賑やかな患者さん入ったね」と言ったんです。

その部屋、2週間前に入っていた患者さんが急変して以来の空き部屋。彼も言葉を言い終わるあたりでその事実に思いあたったらしく、自分の発言を後悔するように、微妙な表情で去っていきました。

ところが、この数十分後、別の医師がやってきて、その部屋を指し、「あの部屋、新しい患者さん入ったの?話し声するけど」と聞いてきました。

その医師が特に霊感が強いという話は聞いたことがなかっただけに、さすがに私たちも背筋が凍ったものです。しばらく夜勤のとき、その部屋の前を通るのが嫌でした。

でも、怖いことばかりじやないのです。

以前勤めていた病院での話ですが、旦那さんが入院していて、奥さんが介護をしているという老夫婦の方がいらっしやいました。いかにも日本男児!という感じで、頑固で怖いけど実は奥さん思いだろうなって感じの旦那さんと、そんな彼の面倒をみている奥さん。

旦那さんが少し乱暴な口調で何を言っても、ニコニコと聞いている奥さんの姿は、私たちから見てもガ仲良し夫婦でした。ところが、旦那さんの病状が少し回復して、もうすぐ一時帰宅が実現するかも、というときでした。

奥さんが突然、自宅で倒れて亡くなってしまったんです。

心筋梗塞での突然死でした。もうそれからは大変。介護をしていた奥さんが亡くなってしまったので、旦那さんの世話をだれがするか、お葬式の手配はどうするか、病院内で緊急家族会議が行われる事態に。私たちも、前の日まで笑顔で病院に来ていたあの奥さんが、と、かなりショックで悲しくて。

しかし、私たち以上にショックを受けているのは旦那さんのはずです。一見気丈に振る舞っているものの、確実に口数が少なくなっている旦那さんの姿に「このまま後を追ってしまうのでは」と、ナースたちの間に緊張が走りました。

こういう。危ない患者さんがいる場合は、夜勤のナースはいつも以上に注意を払います。そして、奥さんが亡くなって3日後のことでした。夜中の巡回時間のことです。

同僚ナースが旦那さんの病室を覗いてみたところ、寝ているはずの旦那さんが、ぺッドの上に起き上がっています。一瞬ドキッとしてよく見ると、旦那さんの目には大粒の涙が。

覗いているナースに気付いた旦那さんが、静かに言いました。

「今、あいつが会いに来てくれたんだよ」

ふと目を覚ましたら、奥さんが自分の目の前にいて、最後のお別れをしてくれたとか。それがどんな内容だったのかは、彼は話してはくれなかったそうですが、ぺッドの上でシクシクと涙を流し続ける旦那さんの姿に、同僚ナースも思わず胸が無くなってしまったとのこと。

次の日、その話を聞いた私たちも思わず涙ぐんでしまいました。最愛の奥さんの死に目に会えなかったこと、直前まで自分が世話をしてもらっていたという事実から、旦那さんには精神的な負い目があったはずです。

でも、奥さんが会いに来てくれたことで、彼が救われたのは間違いないでしよう。

奥さんの死を乗り越えて順調に回復していった旦那さんは、しばらくして退院していきました。

病院での「怪」を聞く度にこのことを思い出し、こんな怪だったらあってもいいな、と思っている私です。