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看護師転職ごっこ

転職を繰り返した看護師の私が毎日元気になれるよう、仕事、人生にふらふらしたときに気ままに書いています。

看護師夜勤がむしばむ健康と家庭

 

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看護師の仕事が過酷な理由のひとつは夜勤・交代勤務があることだ。医療が高度化し、高齢患者が増え、労働密度は昼も夜も変わらないのに、夜間の人員は縮小される。

 そのうえ、残業が増え、勤務が終わって次の勤務に就くまでの間隔は短くなる一方なのだという。「夜の病院は戦場みたいなものです。人手が少なくなるので、ナースコールはほとんど鳴りっばなし。

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『廊下はできるだけ静かに歩いてください』と書いてある張り紙の横を、すごい勢いで走っていくんです」

関西地方の国立病院機構の医療機関で働くカオリさん(30歳代、仮名)の勤務は原則、日勤が午前八時.午後四時四五分、準夜勤が午後四時.午前0時45分、深夜勤が午前0時.午前8時45分。ただ、いずれの勤務も、定時に退勤できることはまず、ない。

病院が収益を上げるため、入院患者の平均在院日数を短くする方針を打ち出し、患者の入れ替わりが激しくなってからは、出勤時も定時より1時間以上早めに出なければならなくなつた。こうした時間外労働の半分以上はサービス残業だという。

看護師の間では、よく「日勤―深夜勤」「準夜勤―日勤」の連続勤務がつらいといわれる。勤務と勤務の間隔が短く、十分に休めないからだ。カオリさんの場合も、これらの勤務間隔はいずれも七時間一五分しかない。そのうえ、定められた勤務前後の残業が常態化しているため、実際の間隔はもっと短くなる。

最近では5、6時間しかないことも珍しくない。「私にとってとくにしんどいのが、日勤―深夜勤です。日勤の残業が終わって病院を出るのが夕方6時くらい。その後、買い物や子どもたちの夕飯の用意、洗濯をすると、結局、一睡もできないまま午前0時からの深夜勤に突入しなくてはならないこともあります。

私は体質的に寝つきが悪くて、夜勤中の仮眠もなかなか取ることができないので、日勤―深夜勤が終わった後はいつも、ふらふらです」

カオリさんはこうした連続勤務のとき、とくに夜勤の時間帯に入ると、首根っこをグッと押さえつけられるような重圧感と頭痛を覚えるようになったという。あるとき、不安になり、職場で血圧を測ってみたところ、最高血圧が200近くあった。夜勤を免除してほしいと師長に相談したが、取り付く島がない。

診断書があれば、対応してもらえるはずと考え、同じ病院の医師に頼んだが、医師は病院側に気兼ねしたのか、遠まわしに断られた。高血圧は生活が不規則になる夜勤職場の典型的な健康被害のひとつだ。カオリさんはその後も夜勤になると、同様の頭痛に教われ、血圧が上がってくるのが自分でもはっきりとわかったという。

以前、高血圧による脳出血で倒れ、後遺症を負ってしまった職場の先輩看護師のことを思い出し、恐ろしくなった。「私も先輩のように倒れないと、夜勤を辞めさしてもらえないのか。倒れたら、辞めさしてもらえるのか。いっそのこと倒れてしまったらいい」。そう思いつめたという。

最後は、子どものかかりつけのクリニックに駆け込んだ。医師は「どうして、勤め先で書いてもらえないの」といぶかりながらも、高血圧症との診断書を出してくれた。おかげで、夜勤のない職場へ異動することはできたが、月収は5.6万円のダウン。

家計を考えると辞めるわけにはいかず、今も、降圧剤を飲みながら働いている。

過酷な夜勤が蝕むのは健康だけではない。家族との絆をも破壊しかねない。

カオリさんの同僚エリカさん(30歳代、仮名) の自宅には、居間や寝室の壁に複数のこぶし大の穴が開いている。エリカさんが家事や育児を手伝ってくれない夫に怒りを爆発させ、殴った跡だという。

エリカさんには二人の子どもがいる。一人目を出産したときは夜勤のない職場に異動できたが、人手不足が進むなか、二人目の出産時は異動の希望はかなわなかった。産体が明け、職場復帰すると同時に夜勤ダイヤに組み込まれるようになると、生活は一気に不規則になった。

エリカさんによると、年下の夫は家事はまるでだめ。「夜中になっても洗濯物を取り込んでいないとか、ゴミの日なのに汚れたオムツを出していないとか。些細なことなのですが、夜勤明けでくたくたになって帰ってきたときだと、『あれも、これもやってくれてない』とイライラばかりが募ってしまって……」

当時は、激しく夜泣きする子どもを挟み、毎晩壮絶な夫婦喧嘩を繰り返したという。そんな窮地を救ってくれたのは夫の母親だった。夫婦の家に住み込み、子育てや家事を手伝ってくれた。

今、落ち着きを取り戻したエリカさんが当時を振り返る。

「毎日が修羅場でした。夫には、取り返しのつかないような酷いことをたくさん言いましたし、私のほうからは手も出ました。あらためて思い出すと、夫はよく許してくれたなあと、冷や汗が出ます。それにしても、私は義母に助けてもらいましたが、家族の助けが得られない人は、どうやって乗り切っているんだろうか……」

日本看護協会が調べた潜在看護職員の離職理由では、「妊娠。出産」が最も多く、次いで「結婚」、「勤務時間が長い。残業が多い」、「子育て」の順番で「夜勤の負担が大きい」は五番目に多かった。

また、正確な統計はないが、看護師の離婚率は高いともいわれる。経済的に自立していることもひとつの要因かもしれないが、夜勤。交代勤務と家族との生活を両立させることの難しさが影響している可能性もある。