看護師転職ごっこ

転職を繰り返した看護師の私が毎日元気になれるよう、仕事、人生にふらふらしたときに気ままに書いています。

よりましな看護師夜勤を模索

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これだけ経済がグローバル化し、あらゆる技術が進歩した社会では、企業や組織は二四時間体制で活動せぎるを得ない。そうでなくとも、患者を相手にする看護師の仕事から夜勤をなくすことは不可能だ。

 では、健康や業務の安全性を損なわない「身体によい夜勤」はあるのだろうか。

佐々木さんは「看護師についていえば、まずは、現在の『逆循環』の三交代勤務を『正循環』へと見直すことが必要です」と指摘する。

逆循環、正循環とは何か

さまざまな研究の結果、人間の生体リズムは二四時間周期ではなく、二五時間周期であることが明らかになっている。欧米などで、人間を太陽光を遮断した暗闇で長期間にわたって生活させる実験を行なったところ、睡眠開始時刻が一時間ずつ後ろにずれていくことがわかった。

人間は本来の生体リズムである二五時間周期を、太陽光によって二四時間周期に調整していることが明らかになったのだ。このため、人間の身体にとっては、普段の就寝時刻を反時計回りに早めるよりも、時計回りに遅らせるほうが比較的負担が軽い。リズムこの流れに逆行する逆循環であるのに対し、遅らせることはリズムに沿った正循環になるからだ。

佐々木さんは海外旅行に行ったときの時差ぼけを考えればわかりやすいという。「例えば、日本からパリに行ったときのほうが、ニューヨークヘ行ったときよりも、時差ぼけを解消しやすいはずです。パリの場合は時刻が後ろにずれる正循環ですが、ニューヨークの場合は前にずれる逆循環だからです」

逆循環が正循環に比べて、動物にとって有害であることも明らかになりつつあるという。ある実験で、死期が近い老齢のラットを八週間にわたり、活動時間を六時間前にずらすグループ(逆循環)と、ずらさないグループ、六時間後ろにずらすグループ(正循環)に分けて生活させ、その生存率を比較した。

その結果、ずらさないグループの生存率は83%だったのに対し、正循環の場合は68%、逆循環の場合は四七%となった。つまり、生体リズム
は規則正しいことに越したことはないが、やむを得ず乱す場合は、正循環のほうが身体への負担が少ないことがわかったのだ。

これらの仕組みを、看護師の勤務形態に当てはめて考えてみる。多くの看護師の勤務サイクルは「日勤―深夜勤―準夜勤」。この場合、勤務開始時刻は反時計回りに前にずれている。つまり逆循環だ。

佐々木さんは、これを「日勤―準夜勤―深夜勤」の正循環にしたほうが「身体にやさしく、生体リズムを調整しやすい」と指摘する。そのうえで、質のよい睡眠を取りづらい「圧縮勤務」も可能な限り、見直すべきだという。

もちろん、そのためには、相応の人員の手当てが必要となってくる。ただし、佐々木さんは「『身体によい夜勤』などというものはありません」と釘を刺す。

「そもそも夜勤は身体に有害なんです。しかし、二四時間社会の現代、夜間に働かないという選択は不可能です。夜勤に従事せざるを得ない現代だからこそ、『よりましな夜勤』を模索していく必要があるのです」

二交代を科学する

今、東京都立病院の一部職場で、こんなユニークな取り組みが進んでいる。二交代職場で働く看護師自らが「実験台」となって、一六時間連続夜勤の弊害を科学的、客観的に立証しようとの試みだ。

都立病院では、東京都による経営改革の一環として、独立行政法人化やPFI手法の導入などの民営化が進んでおり、それに伴い、すでに一部病棟では二交代一六時間夜勤が導入されている。病院側は二交代勤務のメリットとして「夜勤回数が減る」「深夜の出勤や帰宅がなくなる」「準夜勤から深夜勤への申し送りの時間が節約できる」などとアピール。

このため、看護師の中にも二交代を歓迎する声が少なくない。これに対して、病院職員らでつくる東京都庁職員労働組合(都庁職)病院支部は二交代には反対の立場。長時間夜勤の弊害を客観的、科学的に裏付けるため、都庁職が中心となり、二交代職場で働いている看護師の協力の下、彼らの身体データを集める試みを始めたのだ。

2010年8月、調査開始に先駆けて都庁職各支部の関係者らが集まった会合では、都庁職病院支部副支部長で看護師の渡辺暢子さんが「(二交代職場の看護師から)『朝がつらい』『疲れが取れない』などの声を聞いても、科学的なデータがないために、東京都との話し合いでうまく反論できないことがありました。二交代がいかに問題のある勤務かを科学的に証明したい」と調査の狙いについて説明した。

調査には、佐々木さんが所属する労働科学研究所が協力。調査期間中は二四時間にわたって腕時計状の測定機器を身につけてもらい、さまざまな身体データを収集するほか、一六時間勤務が終わった後、高頻度で点滅する光を利用して覚醒度や疲労度を計る「フリッカー値」や、血圧などを測定する。また、勤務中の仮眠を取った後の尿に含まれる「尿中メラトニン」の量などもチェック。

さまざまな指標から、長時間夜勤が身体にどのような影響を与えているかを調べる。海外のある報道では、元客室乗務員が自らの乳がんと夜勤の因果関係について知らされたとき、「夜勤ががんの原因になるとわかっていたら、あれほど長い間、キャビンアテンダントの仕事は続けなかった」と話したと伝えられている。

現代社会において、例え身体に有害でも、すべての夜勤を禁止することは難しい。しかし、夜間に働くことの弊害が科学的に立証され、そのことを労働者が正しく理解したうえで夜勤に就くか、それともまったくの無知かでは、雲泥の差がある。

根拠と知識さえあれば、労働時間の短縮を訴えることもできるし、エクストラペイ(特別支給)を求めることもできるし、場合によっては早期退職の道を選ぶこともできる。

夜勤回数を減らすために人手を増やしてほしいとの訴えにも、説得力が出てくる。
「日本では、二交代の影響についての本格的な科学調査は初めて」(都庁職)。海外では同様の調査が行なわれたことはあるが、その場合は長くても一二時間夜動が対象だった。

世界でも例がない長時間の一六時間夜勤を通して収集されたデータはきわめて〃貴重″ということになる。ユニークな「フィールドワーク」に、関係者の関心が高まっている。